韓国のベストセラー本が日本語で出版された
反日種族主義（반일종족주의）は、韓国で10万部以上を売り上げたベストセラーです。
読者の7割が男性であり、政府やチョ・グク氏などの著名な政治家までもが内容を批判したことによって、さらに注目を浴びることになりました。
日韓関係が急速に冷え込む中で、著者のイ・ヨンフン氏らが20年以上の研究成果を基に、現在の韓国社会の構造問題について語った本です。
親日でも、反日の本でもない
内容に関しては、徹底的に客観的な調査と考証に基づいて語られており、私的な感情が一切入っていない内容となっています。
その点、非常に研究者が書いた本らしいですね。
この本が韓国でベストセラーになった際、親日派も反日派も多くの人が読みました。
そのことからも、一方に偏った内容ではないということがわかりますね。
慰安婦問題や徴用工問題に切り込んでもベストセラーになる理由
日本との歴史問題については、大韓民国という国が建国されて以来、長らく語られてきた問題です。
国民によって長く長く議論されて来たが故に、非常にセンシティブな問題となっており、この問題について触れることは必ず批判を伴うことを意味します。
しかし、長く対立してきて様々な意見が錯綜しているからこそ、韓国の国民は”本当のこと・真実・fact”を求めているのではないでしょうか。
今回のベストセラー化は、そのような私的感情ではなく、単純な知的好奇心によって成し遂げられたものと言えそうです。
「反日種族主義 日韓危機の根源」の内容【ネタバレなし】
反日種族主義とは？
そもそも、イ教授が唱える「反日種族主義」とはどのような内容でしょうか。
반일 종족주의란 20세기 전반, 일본이 한국을 36년 간 식민지배한 역사에 관해 오늘날 한국인들의 정신 깊은 곳에 잠복해 있는 배타적인 감정으로서, 아무런 사실적 근거 없이 허위와 위선, 거짓말로 쌓아올린 샤머니즘적 세계관이다.
20世紀前半、日本が韓国を36年間植民地支配した歴史に関する、現代の韓国人の精神の奥深くに潜んでいる日本に対する排他的な感情には、何の事実にも基づかない虚偽と偽善、嘘によって塗り固められたシャーマニズム的な世界観がある。
https://www.pennmike.com/news/articleView.html?idxno=20098
日本が36年間朝鮮半島を支配したという歴史事実の結果、現代の韓国人の中には日本に対する”特別で歪んだ感情”が残ってしまいました。
それらの特別な感情は、事実に基づいていなくても、時の権力者や国民の「こうであってほしい」という正義感に基づいて、歪んだものとなってしまったのです。
中国も長らく朝鮮半島を冊封体制の中で扱ってきましたが、今日の韓国国民による「中国に対する態度」と「日本に対する態度」は著しく不均衡があるといいます。
時として、国民という「個」の集合体は、指導者や集団の利益に大きくなびいてしまうものです。
イ教授は、こうした政治に左右されやすい「個の集合体」のことを「種族」と呼び、その中でも、さらに日本に対する強硬な感情をもつ種族主義を「反日種族主義」と読んでいます。
日本を利するための書籍ではない
イ教授らは、韓国の歴史問題に関する主張に対し、事実に基づいて一つ一つ反証することで、「反日種族主義」の存在を証明します。
この本は、反日の本ではなく、韓国社会に対して警鐘を鳴らす本なのです。
韓国人の反応・感想・レビュー
7.7という比較的高評価を得た本作ですが、星5をつける人と、星1をつける人の二極化が目立ちます。
その中で、特にユーザから評価を得ていたコメントを一部抜粋してご紹介いたします。
否定的な反応の中には、最後まで読んだらしき人が少なく、感想が多くなってしまっていることをお許しください。
肯定的な反応
大韓民国の夏、反日という世論を逆らうと世に出てきた書物。
私たちの社会は「反日と愛国者」もしくは「親日と親日派（売国奴）」と呼ばれる二項対立のフレームに閉じ込められてしまった。
2019年の夏。だから私は、この本を開いたのである。
私が読んで感じたのは、イ・ヨンフン教授の言葉通り、反日は呪術にかかったシャーマニズムのように私たちの深いところに位置しているということ。
これまで、私は、徐々に大国化していく日本との試合があれば、絶対に勝たなければならないという気持ちで応援し、その結果に基づいて一喜一憂していた。
経済に関しても、私たちがより良い暮らし大国になることを願った。
この本を読んでから、当時の私は、客観的なアプローチではなく、感情的に日本を見ていたことを認める。
日本との敵対関係は国益に害になるだけで、肯定的な未来が存在する過去の問題は、清算し、また、既に清算されたと考えている。
為政者が権力のために国民を感情的に利用してはならない。
冷静で冷たい理性を通して、今の日韓関係を克服して欲しい。
否定的な反応
「怪物」とは、이영훈, 김낙년, 김용삼, 주익종, 정안기, 이우연 上記6人である。
この本を共著した人物でもある。
これらの人物たちを「怪物」と呼ぶ理由は、この本が「非合理的な論法」を用いているからである。
この本は「実証史学」というフレームに閉じ込められ、韓国に不利な「解釈」と日本に有利な「結論」を下しているのである。
イ・ヨンフン（著者）は被害者おばあさんにひざまずいて謝罪した人ですよね？
また、このような妄言をして…
そんな恥の知らない人の本が本当に読む価値があるのですか？
この本を読んだ人は、その程度にしかならない人なのか？
私は読む価値もないと思う。
“日韓関係に興味がある全ての方”に読んで欲しい
韓国で大きな議論を巻き起こした「反日種族主義」
私は、歴史問題に関して、自分と異なる主張の相手に対し、感情的な批判に終始するのではなく、「まずは相手の主張を聞き、反論または、時には自らの主張を修正すること」が民主主義において国民が持つべき基本的な姿勢だと考えています。
私は、これまでの韓国国内の主流な認識に対立する本が、ベストセラーになったという事実が素晴らしいと思います。
本作品は、非常に示唆に富んだ本だと思いますので、日本人の皆さんにもぜひ読んでいただきたいと思います。
これからの日韓関係を改善するために必要不可欠な、韓国に対する理解が深まると思います。
この本は、今までタブー視されてきた、下手すると「売国奴」や「親日派」の烙印を押されかねない敏感な内容について書かれています。
そして、それらの問題について改めて考える機会を私たちに与えてくれます。
著者に大きな敬意を表します。最近の韓国社会は、意見の多様性はなく、言論の魔女狩りが横行する時代に、大韓民国が本当に何を考え、何に向かって進まなければならないか示してくれた本だと思います。