フェミニズム・フェミニストとは？
女性の権利拡張と男女平等な社会の実現を中核とする様々な形態の社会的、政治的運動と思想のことです。
フェミニズムの推進者のことを「フェミニスト」と呼びます。
このような考え方自体は、18世期のフランスにおける「市民革命」に端を発します。
人類のフェミニズムに関する歴史は3つのビッグウェーブに大分することができます。
- 第1波フェミニズム（主に19世紀）
- 第2波フェミニズム（主に20世紀）
- 第3波フェミニズム（主に21世紀）
女性参政権や社会主義（全員が平等な社会を目指す思想）に基づいた女性の権利向上を求める活動が第１波です。
第２波は、出産を経た育児や家事といった女性の役割分担など、社会に根強く残る文化全体を批判する運動へと発展しました。
そして、第３波は1980・90年代から徐々に盛り上がり始め、今に至ります。
第３波は政治的な色合いはよわく、もっと日常の中に潜んだ不遇に対して声を上げる運動となっています。
過激な思想と捉えられがち
フェミニズムは、もともと社会主義といった政治運動と一緒に盛り上がった思想です。
従来の社会制度の変革を求める運動と共に行われてきた歴史があるため、時に過激な思想として捉えられがちなのです。
様々な分流に分かれている→過激派だけでない
フェミニズム運動の中でも、様々な意見を持つ人々がおり、それは複数の分流に分かれています。
自由主義フェミニズム（Liberal feminism）やラジカルフェミニズム（Radical feminism）、相互交差性フェミニズム（Intersectional feminism）といった思想系統に分かれているだけでなく、思想の程度にも個人差があるため、フェミニスト全てをまとめて語ることは非常に危険なことなのです。
韓国におけるフェミニストの歴史
韓国の女性問題は、常に道徳的背景と密接に結びついて語られます。
古代より儒教の教えが政治制度・家庭双方に組み込まれ、今も根強く残る朝鮮半島では「家父長制」と呼ばれる、ある種の男性中心主義が残っています。
韓国では重要な事件が起こるたびに、フェミニズム運動が盛んになります。
今回は、その中でも特に重要な、抑えておくべき出来事を紹介します。
朴槿恵大統領就任（2013年）
朴大統領は、東アジア初の女性大統領として2013年に就任しました。
その際、フェミニストによる活動が活発化し、多くの海外メディアがこれを報道したことから、韓国におけるフェミニズム運動の高まりが世界中に知れ渡るきっかけとなりました。
江南駅通り魔事件（2016年）
”女性嫌悪”が生み出した最悪の殺人事件です。
当時35歳の男性がカンナム駅で、面識のない女性を十数回に渡って凶器で刺して殺害しました。
犯人は「数週間前に女性に吸い殻を投げつけられた」と話していたことから、”女性であるから”という理由だけで犯行に及んだことが分かりました。
この事件は、韓国内で社会問題になるほど議論を呼ぶきっかけとなりました。
韓国の人気フェミニスト文学・本
以下に、フェミニズムに少しでも興味を持っている全ての人（男性を含む）にご一読いただきたい作品をまとめました。
82年生まれ、キム・ジヨン
#MeeToo運動を巻き起こし、映画にもなった「82年生まれ、キム・ジヨン」については、以前私が書いた記事がありますので是非ご覧ください。
私たちにはことばが必要だ―フェミニストは黙らない
韓国社会で可視化され始めた女性差別の問題にスポットを当てた本です。
男性に差別されたら実際にどう対策すれば良いのか、力強く痛快な表現で提案しています。
娘について
「普通の幸せ」ってなんだろう？娘と娘の彼女、そして私。
母子関係や老い、LGBTといった諸問題を鮮明に描いた作品。
完全版 韓国・フェミニズム・日本
韓国におけるフェミニズム だけでなく、日本についても知りたいあなたはこれを読むべきでしょう。
「文藝」で特集されて以降、5日で異例の重版が決定した話題作の完全版が2019年11月27日に発売です。
フェミニスト団体「メガリア」とは
韓国のネット上のフェミニスト団体です。
女性への盗撮撲滅運動を展開し、とあるポルノサイトを閉鎖まで追い込んだこともあります。
「ウォーマド」も有名な集団ですが、過激すぎる活動が故に逆に「男性嫌悪」を助長していると指摘されて問題となっています。。
韓国は日本よりフェミニズムが進んでいるのか？
統計上に大差はない
世界経済フォーラム（WEF）によって、諸外国のジェンダーに関する不平等な状況を分析した「世界ジェンダー・ギャップ報告書（Global Gender Gap Report）2018」が発表されました。
その中では、全149ヵ国中、日本が110位で韓国が115位でした。
いずれも平均を大きく下回る順位で、日本は先進国最下位・韓国はOECD加盟国として最下位を記録しています。
WEFは、両国に対して医療及び教育の問題ではなく、政治や経済格差の問題を指摘しています。
10年前には考えられなかったムーブメント
今でこそ、様々なフェミニスト文学が発刊され、社会問題として真剣に議論が行われている韓国社会ですが、このようなムーブメントは10年前には考えられなかったようです。
ただし、そのような文学がベストセラーとなっているという点において、私は女性の人権問題に関しては、韓国が一歩リードしていると言っても過言ではないと感じています。
